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<W解説>韓国の尹錫悦大統領、当選から1年=見えてきた成果と課題

2023/03/10 09:51入力

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韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の当選から今月9日で1年となった。大統領選で尹氏は48.56%の票を獲得し、最大野党「共に民主党」の候補だったイ・ジェミョン(李在明)氏に勝利。最終盤まで激戦を繰り広げ、両者の票差はわずか0.73ポイントと、憲政史上最も僅差となった。尹氏の当選から1年を迎えるのを前に、韓国の公共放送KBSが8日報じた世論調査の結果では、尹氏の国政運営を「評価しない」が「評価する」を上回った。

検事だった尹氏はムン・ジェイン(文在寅)前大統領に買われ、2019年に検事総長に就任。文政権は尹氏が「検察改革」の主役となることに期待したが、尹氏は文氏の側近らの捜査に注力。文氏が当時任命した法相の疑惑を追及して辞任に追い込むなどした。

尹氏は「常識と正義が崩れる所をこれ以上見ていられない」として検事総長を辞任。当時、政権と真っ向から対峙(たいじ)した姿が支持され、政界入りへの待望論が高まり、政治経験ゼロでありながら大統領選に出馬した。当時最大野党だった「国民の力」の大統領選公認候補に選ばれた。

選挙戦では当時の文政権を厳しく批判。「真の公正な社会をつくる」として政権交代の実現を訴えた。選挙戦は李氏との事実上の一騎打ちの構図となり、尹氏が僅差で勝利。昨年5月に第20代大統領に就任した。就任演説で尹氏は「自由民主主義と市場経済の体制を基盤に、国民が真の主人となる国へと再建し、国際社会で責任と役割を果たす国をつくらなければならないという時代的な要求を受けてこの場に立った」と表明した。「国民との距離を縮めたい」として選挙戦で公約に掲げていたかつての権威の象徴、青瓦台(大統領府)を宣言通り就任初日から一般に開放した。

また、尹氏は就任以来、経済再生を最優先に取り組んできた。「民間主導の成長」を掲げ、輸出を拡大して経済危機を乗り越えるとして、大胆な規制緩和を通じた企業支援を強調してきた。元日に国民向けの「新年の辞」を発表した際も主に言及したのは経済分野だった。輸出の重要性を繰り返し強調し、「複合危機は輸出で突破しなければならない、輸出は韓国経済の根幹で、雇用の源泉」とした。また、「韓国の輸出戦略は過去とは変えなければならない」「全ての外交の中心を経済に置き、輸出戦略を直接構築する」と決意を示した。

また労働、教育、年金分野の改革に乗り出し、新年の辞で尹氏は「いわゆる3大改革をこれ以上後回しにできない」とした。

外交では、自由民主主義と市場経済の価値を共有する国との連携、とりわけ米韓同盟の強化や日韓関係の改善を最優先課題に据えた。日韓最大の懸案である元徴用工訴訟問題では今月6日、政府が解決策を発表。「戦後最悪」とまで言われた両国の関係が「雪解け」に向け大きく前進している。韓国国民の対日感情も肯定的な方向へ向かっていることをうかがわせる意識調査の結果が出ており、新型コロナウイルスの水際対策の緩和を受け、日本に旅行で訪れる韓国人は急増している。2019年に始まった日本製品の不買運動は「終焉(しゅうえん)を迎えた」とも指摘されている。一方、対北朝鮮政策は文前政権の融和路線から転換。北朝鮮がミサイル発射を繰り返している中、尹氏は「朝鮮半島の危機状況が深刻になれば、独自に核保有することもあり得る」と述べている。

就任以来、野党との対立は激化し、国会で多数議席を占めている最大野党「共に民主党」は尹政権の改革の方向性などをめぐり反発を強めている。「共に民主党」は尹政権の対日政策について「弱腰外交」と批判。尹政権の人事については、検事総長出身の尹氏が、要職に検事を重用しているとして「検事政権」とからかっている。また、検察が現在、かつて尹氏が大統領選で激しく争った李氏について、知事時代のさまざまな疑惑の捜査を進めており、このことについて李氏は「政治弾圧」と激しく反発している。

KBSが世論調査会社に依頼して今月5~7日に行った世論調査では、尹大統領の国政運営について、「よくやっている」と答えた人は40.4%、「よくやっているとは思えない」との回答は55.9%に上った。肯定的な評価をした理由では「労働改革の推進」が最も多く、否定的な評価をした理由では「経済、国民生活への対策の怠り」、「側近中心の人事、不十分な人事検証」などが挙がった。

5月に就任2年目に入る尹氏。世論調査でも示された課題には真摯(しんし)に向き合う姿勢が求められる。




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