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<WK寄稿>「いいとこ取り」(学び上手)の柔軟性はどこから?!

2022/05/25 18:51入力

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日本が戦後の廃墟から立ち直り経済大国になった要因の一つとして「いいとこ取り」があげられました。ラジオ、テレビ、パソコン、自動車等のオリジナル製品の良いところをどんどん取り入れ、持ち前の完璧主義と勤勉さで元の商品よりも優れた製品を作り世界経済の雄に上り詰めました。

 堺屋太一氏の『「変革期」の人と組織』によると日本は歴史上、日本を創った五つの変革期があったと説明しています。私はその内いいとこ取りが際立ったのが第一期の聖徳太子の時代の仏教伝来、第五期の明治維新そして戦後の経済成長期だと思います。(参考までに堺屋氏が提示した変革期は、第二期.古代から中世への転換期、8世紀末~9世紀末。第三期.平安貴族から武士が政治の実権を奪った時期。第四期.戦国時代から徳川幕府成立期)

 キリスト教がローマ帝国の国教になるのに弾圧と抵抗の戦いが300年余り続いたことに比べれば多少の抵抗対立がありましたが、日本に仏教が入ってきても神仏習合(仏教と神道とを同時に信仰する)という棲み分けの精神で無理なく受け入れました。

 その立役者が聖徳太子ですし、その「和」の精神は今でも日本人の心の支えになっています。現代でも宗教の対立で戦争している国々に比べ、初詣や七五三詣りは神社で、クリスマスや結婚はキリスト教会で、法要や葬儀は仏教でと対立せず、それぞれのいいとこ取りをして共存しています。

 明治維新でも最初は大久保利通、木戸孝充、伊藤博文ら元勲らは過激な「尊皇攘夷」派でしたが西欧諸国が優れていると見るや素早く「開国開化」に転換して、その先進制度や技術を「いいとこ取り」してアジアで唯一近代国家を築きました。太平洋戦争後の日本も「米英鬼畜」から迷うことなく敵対国アメリカに舵を切り見事に一等国の地位を獲得しました。

 このようにフットワークが軽く柔軟に迷うことなく新しい文物を取り入れられるいいとこ取りの下地は、日本の伝統や地理的条件によるとえらい先生方が著書に書いています。

 精神分析学者である河合隼雄氏はその名著「中空構造日本の深層」で古事記に出てくる神々を分析して日本社会は“中心に何もない中空構造”である。真ん中を空にしとけばクッションができ対立が無く左右が調和できる構造だと述べています。平たく言えば原則、主張などにこだわらず柔軟に対応することができる仕掛けです。中国や朝鮮が理念、主義主張や旧体制(儒教思想)にこだわり過ぎて近代化が遅れたことを考えれば明らかです。

 また、ベストセラーになった「日本辺境論」では日本は韓国と違い中国を中心とした華夷秩序(かいちつじょ:中国の皇帝を頂点とする階層的な国際関係)から地理的にも思想的にも束縛されず自由であったため良いとこだけを取り入れてきたと書いています。堺屋太一氏も“文化を体系として見ない日本人”という項目で「文化体系よりもその実用性のみで判断して選択するのが当たり前という発想が定着した」と書いているように、しち面倒くさい文化体系や思想よりも役に立つのかどうか実用性が判断の材料で、「学び上手」と表現しています。

 一言でまとめるなら日本人は理念や哲学的な目に見えない空理空論よりも具体的な事柄を取り入れ方に長けている国民性と言えます。

 ソウルでのあるフォーラムで過去の慰安婦、徴用工問題を討論する場所で、日本のある商社の現地社長がこう提案しました。

 “過去の問題にとらわれるよりも日韓が協力して第三国で経済活動するのが両国の利益につながるのではないでしょうか!”

 今更過去のことを蒸し返して対立するよりも未来に向かって手を携えていくべきではないかという提案でしたが、理念や大義名分、正義を重んじる傾向にある韓国人にとっては違和感が残りました。

 過去の問題の是々非々を正して次の段階に進むべきというのが韓国人の考えです。このずれが今の日韓関係の悪化に油を注いでいるのではないでしょうか。

※権鎔大(ゴン・ヨンデ)韓日気質比較研究会代表の寄稿。ソウル大学史学科卒業、同新聞大学院修了。『あなたは本当に「韓国」を知っている?』の著者




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