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<W解説>文大統領夫人の「ヒョウのブローチ」騒動とは?=韓国で2億 vs 2万の論争

2022/03/29 21:37入力

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2017年、韓国のパク・クネ(朴槿恵)前大統領が弾劾された時、衣装代も問題となっていた。当時、弾劾政局を主導していた革新系勢力は、朴前大統領の衣装に、使い道を公開する必要のない「特殊活動費」が使われたと主張しながら非難していた。

 弾劾後に大統領になったムン・ジェイン(文在寅)大統領は、「歯磨き粉まで自腹で買う」と話し韓国民を感動させた。文大統領の5年間の任期が終わろうとする今、ウクライナでの戦争よりも韓国で話題になっているものが文大統領の妻キム・ジョンスク(金正淑)夫人の衣装代だ。

 青瓦台(韓国大統領府)が「特殊活動費と金正淑夫人の儀典費用などを公開せよ」という韓国裁判所の判決に不服・控訴し、文大統領の任期終了までの情報公開が難しくなってから衣裳代はもっと話題になった。このまま任期満了の場合、大統領記録物と指定され、15年から30年間、関連情報の公開が難しくなる可能性もある。

 2018年6月「文大統領夫人の衣装・アクセサリーなど品位維持のための儀典費用と関連した政府の予算編成金額および支出実績」などを要求する情報公開を韓国の市民団体が請求した。夫人は文大統領就任後、数回にわたり高価なブランドの服を着用したことで物議を醸していた。

 そのたびに「情報公開要求」をめぐって論争があり、青瓦台は「非公開」を貫いた。4年もかかった裁判の結果は、「国家機密に該当しない」とのこと。その判決に青瓦台が不服・控訴した訳だ。

 韓国のネット掲示板やSNSには夫人が身に付けていたアクセサリーと衣装などを集めた写真が集められた。「数千万ウォン(数百万円)のブランドではないか」との比較写真も出回っている。「Kイメルダ」とやゆする声もある。ぜいたくな生活をしたとされるフィリピンの元大統領夫人イメルダ・マルコス氏が韓国にも現れたとの自嘲の言葉だ。

 その中でも特に話題を集めているのが、夫人が胸元に付けていたヒョウのブローチ。夫人のインド訪問などに使われたが、本物なら2億ウォン(約2000万円)を超えると言われている。写真で比較する限り、このヒョウのブローチは、確かに世界的なブランド「カルティエ」のブローチと酷似している。

 カルティエのヒョウのデザインは「王冠を賭けた恋」で有名な英国のエドワード8世(1894~1972)が王位を捨てながらも結婚したウォリス・シンプソン夫人(ウィンザー公爵夫人:1896~1986)を象徴することで有名だ。このデザインを愛していたシンプソン夫人の死後、カルティエがこれを買い戻したこともあった。

 しかも、このヒョウのデザインにはもう一つの愛が隠れている。カルティエ家の3代目のルイ・カルティエの話だ。彼は美しい女性と恋に落ちたが、彼女の家柄が理由で結婚を反対された。3代目は彼女を宝石担当デザイナーとして生涯を共にする方法を選んだ。結婚できない恋人のジャンヌ・トゥーサンがデザインし商品化したヒョウのデザインのお陰で、彼女は3代目カルティエの「配偶者」ではなく「同僚」として一生を共にすることが出来た。

 この2つの恋を愛していたはずの文大統領夫人は現在「四面楚歌(そか)」の状態。もし、本物だった場合、該当製品はおよそ2億ウォン(約2000万円)を超える高価なアクセサリーとなり、朴前大統領を悪に定義し、対照され「庶民的」と称賛されていた文大統領のイメージに泥を塗ることになる。

 もし、偽物なら一国のファーストレディーが大統領専用機に偽物を載せ、海外で「国の恥」をさらしたことになる。

 唯一の脱出口は「本物でも偽物でもない、廉価の別の商品」であることだ。実際、文大統領の非難勢力からは「2億ウォン(約2000万円)を超えるブローチ」になっているが、支持勢力からは英国アクセサリーブランドの商品で、価格は12.5ポンド(約2万ウォン、約2000円)と主張されている。

 現時点で青瓦台はヒョウのブローチに対して公式立場を明かしていない。しばらく韓国ネットではヒョウのブローチの本物・偽物論争が続くだろうが、このデザインに込められた歴史的な恋は、この騒動で汚されることのないように祈りたい。




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